2017年03月01日

無シフトにどのカナを置くか

事実無根の垂れ流しは、さすがに見逃せません。少し間が開いてしまいましたが、Nicola スレのこの発言に言及します。

なぜ蜂蜜小梅がNICOLAよりも覚えにくいのか。
NICOLAは清音をクロスシフトすると濁音になるという規則の例外はない。
だから「は」を覚えれば「ば」を覚えたも同じ。
蜂蜜小梅は、清音を濁音化するのに、ストレートシフト化する場合もあれば、
ストレートシフトをクロスシフトにする場合もある。
蜂蜜小梅のウリは拗音ワンアクション化なのだが(撥音は未対応)、
例のライフラボの人が考えたNICOLA拗音拡張だとNICOLAの上位互換で拗音も撥音(っ)も対応している。

蜂蜜小梅配列は清濁拗同置の日本語配列です。したがって、

清音をクロスシフトすると濁音になるという規則の例外はない。だから「は」を覚えれば「ば」を覚えたも同じ。

という因果関係は、蜂蜜小梅配列でも成立します。

蜂蜜小梅は、清音を濁音化するのに、ストレートシフト化する場合もあれば、ストレートシフトをクロスシフトにする場合もある。

蜂蜜小梅配列の濁音は全て他手シフト(クロスシフト)です。同手シフト(ストレートシフト)で濁音を入力することはありません。この手の post-truth は、マジで勘弁して。

Tron ルールは覚えにくい?

本稿では、清濁同置に関する下記原則を、それぞれ Nicola ルール、Tron ルールと呼称します。

Nicola ルール
濁音を持つ清音は、濁音と同じキーの無シフトに置く
濁音は他手シフトに置く
Tron ルール
濁音を持つ清音とその濁音は、同じキーに置く
濁音は他手シフトに置く

周知の通り、蜂蜜小梅配列は Tron 配列の清濁同置ルールを パクって 踏襲しています。都度シフトの親指シフト配列では、シフトが連続してバタバタした打鍵になることはできるだけ避けたい課題です。つまり、無シフト率が高いことは「是」。論理配列比較 Nicola vs Tron を書いた私が、無シフト率を上げやすい Tron ルールを選ぶのは必定でした。

で、Tron ルールは Nicola ルールよりも覚えにくい? 今さらそんなことを聞かれても、正直なところ、「は? 何言ってんの?」としか答えようがありません。

蜂蜜小梅配列の「じ」と「ぢ」を例にとると、清音の「し」は[L]キー無シフト、「ち」は[.]キー同手シフトと、清音側のシフト状態は異なりますが、

  • 「じ」は「し」の他手シフト
  • 「ぢ」は「ち」の他手シフト

と、全く同じ意識で(仮想キーを)打鍵できます。

逆に、「し」は「じ」の清音だから[L]キー無シフトを打鍵しようと考えたり、「ち」は「ぢ」の清音だから[.]キーの、、あれ? どっちのシフトだっけ? と迷ったりなんてことは、どちらも全くありません。

小梅配列の開発過程を振り返っても、Tron ルールは覚えにくい・思い出しにくいから Nicola ルールに戻そう、なんて考えたことは一切ありません。長年付き合った Nicola 配列と小梅配列とで、覚えやすさに差があると感じたことも皆無です。Tron 配列や小梅配列・蜂蜜小梅配列のユーザが「Tron ルールは覚えにくい」と嘆いたりするのを、寡聞にして一度も見たことがありません。

むしろ問いたい。

  • 濁音を持つ清音は、濁音と同じキーの無シフトに置く

という Nicola ルールは、何か役に立っているのでしょうか。

Nicola ルールは何のためにある?

まずは清濁同置の親指シフトを採用した各配列の無シフト率を、例によって 10万字サンプル を用いて紐解きます。対象としたのはカナと句読点及び長音の合計 101,156 字で、「。、ー」以外の記号や英数字は割愛しています。蜂蜜小梅配列はタイプ・アシストを使わない条件で計算しています。

上下ホーム段別の無シフト率

Nicola 配列 Tron 2005-1011 蜂蜜小梅配列
無シフトの
打鍵数
名目打鍵数
比 101,156
実質打鍵数
比 143,825
無シフトの
打鍵数
名目打鍵数
比 101,156
実質打鍵数
比 126,509
無シフトの
打鍵数
名目打鍵数
比 98,619
実質打鍵数
比 133,254
上段 20,940 21.2% 14.6% 19,177 19.4% 15.2% 19,386 19.7% 14.5%
ホーム段 31,899 32.3% 22.2% 35,716 36.2% 28.2% 31,851 32.3% 23.9%
下段 5,648 5.7% 3.9% 19,906 20.2% 15.7% 13,401 13.6% 10.1%
合計 58,487 59.3% 40.7% 74,799 75.8% 59.1% 64,638 65.5% 48.5%

蜂蜜小梅配列のトータルの無シフト率は、Nicola 配列と Tron 配列の中間ぐらい。段毎の詳細を見ると、蜂蜜小梅配列の無シフト率が Nicola 配列を上回っているのは下段だけで、上段とホーム段はほぼ拮抗していることが分かります。Tron 配列が比類ない圧倒的な無シフト率を誇るのに対して、同じ Tron ルールを採用した蜂蜜小梅配列が中庸と呼ぶしかないスペックにとどまったのには、もちろん理由があります。

無シフトに置いたカナ、置かなかったカナ

無シフトに置いたカナを、具体的に比較します。

【濁音を持つ清音】
かきくけこさしすせそたちつてとはひふへほ
全20字
【他の清音・捨て仮名・記号】
あいうえおなにぬねのまみむめもやゆよらりるれろわをん「ぁ」「ぃ」「ぅ」「ぇ」「ぉ」「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」、。ー,.・〜「」
全44字

【濁音を持つ清音】と【他の清音・捨て仮名・記号】、つまりは濁音・半濁音以外の合わせて64字を、清濁同置の各配列は無シフトという特等地にどう配字したのか、一覧表にまとめました。


無シフトに置いた【他の清音・捨て仮名・記号】 無シフトに置かなかった【濁音を持つ清音】
Nicola 配列 。ら,、ういん.めね 10/44 0/20
Tron 配列 らる「ょ」のあれもをいうんまりにな、。「っ」 18/44 けせそちひふへほ 8/20
蜂蜜小梅配列 。な・おのに「」、るーんいゆまろ〜「っ」うら 19/44 きくけさちつひふ 8/20

Nicola 配列の配字規則は、先の Nicola ルールのほかに特筆すべきは、下段を嫌ったことぐらいですかね。対する Tron 配列は、同じ手の同手シフトの連続を排除するために、無シフト率と交互打鍵率を徹底して高めたことが分かっています。

蜂蜜小梅配列が無シフトに仕掛けたこと

そして、蜂蜜小梅配列はというと、

  • 左手の打鍵が連続するのを避けるため、交互打鍵率を高めて左手連打率を最低限にした
  • 遠いキーほどシフトを減らした
  • 文末優先で「。なてせおのに、たるはんいしとまろうすらへ」を無シフトに置いた
  • 撥音対策として「ん」を無シフトに置いた
  • 促音対策として「っ」を無シフトに置いた
  • 長音対策として「ー」を無シフトに置いた
  • 右利き専用配列として、安全対策を徹底した

等々いろんなことを、飛鳥カナ配列の Ray 先生に倣ったことも含めて、無シフトに施しています。小梅配列と呼んでいた時代は、拗音対策として「ゃ」「ゅ」「ょ」を左手下段の無シフトに置いていましたが、拗音拡張を施した蜂蜜小梅配列へと脱皮する過程で放棄しました。様々な対策を講じた結果としての、実質打鍵数比 48.5% という蜂蜜小梅配列の無シフト率に、私は満足しています。

Nicola ルールに従えば、【濁音を持つ清音】以外のカナ・記号を無シフトに配字できる自由度は10字分しかないわけで、きつい制約はデメリットでしかないと判断します。下段嫌いと併せて、何のメリットも生まない Nicola ルールに拘泥するのはひたすら無益です。

今にして思えばですが、Nicola ルールは清濁同置の親指シフト誕生時ならではの、屋上屋を架す規則だったと言えます。無駄かどうかもやってみなければ分からない、原始配列ならではの苦労がしのばれます。

無シフトに置いた促音と長音、撥音

促音と長音、そして撥音を無シフトに置いた理由についても宣伝しておきます。下記の例示はそれぞれ何モーラか、実際に声に出して確かめてみてください。

しき(四季)
直音のみ
し + き:2モーラ
しょき(初期)
拗音を含む
しょ + き:2モーラ
しっき(漆器)
促音を含む
し + っ + き:3モーラ
しんき(新規)
撥音を含む
し + ん + き:3モーラ
しょうき(正気)
拗音を含む
しょ + う + き:3モーラ
しょっき(食器)
拗音と促音を含む
しょ + っ + き:3モーラ
しーと(シート)
長音を含む
し + ー + と:3モーラ
しょーと(ショート)
拗音と長音を含む
しょ + ー + と:3モーラ

促音「っ」と長音「ー」、そして撥音「ん」も、それ自体は1モーラを消費します。拗音の直後に促音、長音、撥音が続くことも珍しくありません。だから蜂蜜小梅配列は、促音と長音、撥音についてはシフトを併用する拡張扱いとせず、最も素早く動かせる右手人差指の無シフトに置いています。シンプルな入力ルールで、正気と食器、ショートを同じ打鍵感で扱えるのが、21世紀基準の日本語配列=蜂蜜小梅配列です。

蜂蜜小梅のウリは拗音ワンアクション化なのだが(撥音は未対応)、例のライフラボの人が考えたNICOLA拗音拡張だとNICOLAの上位互換で拗音も撥音(っ)も対応している。

繰り返しになりますが、数が多すぎる拗音は拡張したシフト入力を行いますが、促音と長音、撥音は拡張入力に頼ることなく最優先で待遇しています。蜂蜜小梅配列は、日本語を日本語のリズムで入力します。

無間地獄

原始配列を神格化して、未だにそれが最先端だと信じ込もうとする無理こそが、無限ループに陥った「親指シフトの失敗」だということに、どうして気付かないんでしょうか。

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