右利き用の親指シフト配列では、鬼門と呼べるぐらいに大きなポイントとなる左手の人差指の使い方について、その前後の打鍵がどのようになっているのか、例によって10万字サンプルで調べてみました。
例えば小梅配列 1.3.2 版で「よそう」は[CTM]と打鍵します。指別に見ると[左中][左差][右差]となります。このような左人差指を含む打鍵が発生した時に、前の打鍵を[左中]、次の打鍵を[右差]というスタイルで表現します。
絶対値での比較。
- 絶対値
- 全体で100打鍵した時、該当する打鍵がどれくらい発生したかを示す。
- 各レコードの合計は、左人差指の打鍵率に等しい。
前の打鍵は「どの指から左人差指に来たか」を、次の打鍵は「左人差指からどの指へ行くか」を分解したグラフです。
連続シフトを採用した飛鳥系は、特に左人差指の打鍵が連続することを忌み嫌っているのが見て取れます。人差指にカギ括弧「」を入れた 21C-341 〜を敢えて取り上げましたが、人差し指の使い方が飛鳥配列としてやはり特異だったと言えるでしょう。
相対値での比較。
- 相対値
- 左人差指を100打鍵した時、該当する打鍵がどれくらい発生したかを示す。
- 各レコードの合計は100%。
小梅配列と飛鳥配列は交互打鍵率で8.5ポイントほど差がありますが、こと左人差指に限っては2〜3ポイントしか差がありません。「弱い人差指」に飛鳥配列が細心の注意を払っていることが、このグラフからも伺えます。
左人差指前後の打鍵と同手跳躍。
さらに、左人差指の前後の打鍵が同手跳躍となる場合の数値を抽出しました。先ほど例示した「よそう」も[CTM]と跳躍を含むので、この条件に当てはまります。右手側は同手跳躍にはなりえませんから、この表では対象外となります。分子がかなり小さいので、比率ではなく発生数で示します。参考までに10万字サンプルの分母は104,357で、104,357分の5は0.0048%に相当します。
前の打鍵 | 次の打鍵 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
左小 | 左薬 | 左中 | 左差 | 左小 | 左薬 | 左中 | 左差 | |
小梅 1.3.2 | 46 | 56 | 78 | 64 | 36 | 175 | 94 | 64 |
小梅 1.3.1 | 58 | 60 | 90 | 72 | 48 | 178 | 104 | 72 |
小梅 1.3.0 | 61 | 68 | 81 | 78 | 42 | 179 | 113 | 78 |
小梅 1.23 | 79 | 62 | 151 | 124 | 49 | 198 | 216 | 123 |
小梅 1.22 | 73 | 204 | 76 | 140 | 62 | 183 | 160 | 137 |
小梅 1.21 | ||||||||
小梅 1.11 | 112 | 188 | 571 | 367 | 664 | 165 | 234 | 364 |
Nicola | 129 | 126 | 331 | 207 | 74 | 209 | 459 | 207 |
Tron 2005-1011 | 211 | 229 | 391 | 402 | 240 | 186 | 200 | 400 |
かえであすか | 27 | 49 | 139 | 24 | 48 | 43 | 51 | 24 |
飛鳥 21C-368 | 11 | 42 | 101 | 6 | 6 | 45 | 39 | 6 |
飛鳥 21C-341 | 5 | 13 | 56 | 10 | 16 | 37 | 72 | 10 |
飛鳥 21C-333 | 25 | 18 | 43 | 12 | 10 | 48 | 98 | 12 |
飛鳥 21C-290 | 25 | 27 | 210 | 7 | 24 | 36 | 34 | 7 |
さら 20070501 | 330 | 224 | 299 | 257 | 138 | 155 | 382 | 253 |
蜂鳥 X-001 | 10 | 60 | 64 | 46 | 16 | 129 | 116 | 46 |
翡翠 A003 | 139 | 96 | 246 | 493 | 278 | 334 | 264 | 493 |
翡翠 S009 | 113 | 164 | 278 | 347 | 175 | 202 | 359 | 347 |
小梅配列 1.22 版と 1.21 版は左手側が同一なので、数値も等しくなります。
小梅配列は 1.3.0 版で そろそろやめさせろ が左人差指1本で入力できたりして、本当にこれで大丈夫なのかと不安がなかなか払拭できませんでした。このような左人差指の安全度を示す指標の一つになりうるデータを示すことができて、ようやくほっと一息という感じです。
このデータはまた、小梅配列の進化の過程をまざまざと見せつけてくれた、作者の私にとって実に感慨深いものとなりました。1.11 版は Nicola の改悪でしかなかったのがバレバレですから。あの頃は暗中模索というよりも、配列作りの基本のキの字も何も分かっていなかったんだなーと、改めて思い知らされます。
なお、配列作りにおいてどこか1点を優先させると、そのしわ寄せは別なところに倍返しで必ず現れます。優先と妥協。負担をどのように配分するかを考えて実装していくかが、配列作りの難しさであり、面白さでもあります。