2009年02月24日

打鍵数=負担度ではないと主張してみる。

コメントと補足、ありがとうございます> kouy さん。論旨を発展させるため、別発言にします。

実際の数値がこれだけ違えば、左手負担の程度が同じだとは、わたしには思えません。「程度の差こそありますが」と書かれていますが、程度の差が重要だと思います。

私の違和感を表現すると、こんな感じです。

  • 負担が軽いから、痛くなる。
  • 負担が軽いから、疲れる。
  • 負担が軽いから、これ以上の負担は掛けられない。

これらの文章は、自然文として因果が呼応していませんよね。飛鳥配列の左手の打鍵回数が少ないことは、飛鳥配列の左手の負担度が低いことを意味しません。打鍵数だけが負担の軽重を決定する唯一の数値であると考えるのは、間違いであると主張します。指や手の疲れや痛みを左右するパラメータが打鍵数以外にもいろいろあることは、皆さんよくご存知ですよね?

これを数式で表現すると、指や手への負担度 L は次のようになります。

  • 負担度 L = 打鍵数 S × 係数 K

K を負担係数と呼ぶとすると、K は論理配列によって固有の値を持っていて、

  • 非親指シフト < 逐次シフトの親指シフト < 連続シフトの親指シフト
  • 非同時打鍵 < 同時打鍵
  • シフトが少ない < シフトが多い
  • 跳躍が少ない < 跳躍が多い

などと、様々なパラメータによって多寡が決まってきます。

そして、この負担度 L は、よくできた論理配列であれば、例えば飛鳥や下駄や月2-263 などでは、おそらくは似たような数値になっているのではないでしょうか。

あるいは、負担がこれ以上きつくなると痛くなったり疲れたりする、先のエントリーで閾値と呼んだ上限の値=飽和負担度 LMAX は、論理配列とは関係なく一定だと推測されます。

何はともあれ、打鍵数だけが「負担の程度」を決定する唯一の係数ではないと、改めて主張しておきます。

とは言うものの。

具体的な数値を代入して配列毎の負担係数を探ってみましたが、近似値がなかなか得られません orz

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posted by 141F at 02:07| Comment(5) | TrackBack(2) | oyayubi | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 わたしの考えは、打鍵数が負担の軽重を決定する“唯一の”数値であるとまでは言いませんが、手に掛かる負担というものはキーを押すことにより発生するものが大きく、打鍵数の多さは負担の軽重にかなり大きな影響を与える、というものです。
 この点から主張が違うのだから、その後の話がかみ合わないのも当然でした。

 141Fさんがどのように考えているか、ということはわかりました。ありがとうございました。
Posted by kouy at 2009年02月25日 21:03
kouyさんが打鍵数の多寡にこだわるのは、下駄配列の作者であることを考えれば当然ですよね。

「1打鍵の重み」を文字列同時打鍵配列の作者としてどのように考えておられるのか、いつか記事としてまとめられることを楽しみにしております。
Posted by 141F at 2009年03月02日 00:33
横レスにて失礼します。

配列の設計にあたって、負担をなるべく少なくするようにするというのは基本的な考え方で、問題はその負担(コスト)をどのように定式化するということにあります。

この問題を真剣に扱おうとすれば、おそらく人間の生理的特性をきちんと分析してやらなければいけないはずで、学問分野としては医学などの助けを借りないとできないでしょう。

そうした知見がない場合は、ある程度、想定や想像を使って定式化をするということになります。入力方法の評価に当たって、打鍵数というのは一つの目安ではありますが、おそらくそれだけでは十分ではないのは明らかでしょう。

拙論になりますが、私は配列の評価に当たって、打鍵数と指の動く距離、使う指の違いを考慮した指標を考えて実際にいくつかの配列の評価をしています。

http://homepage3.nifty.com/gicchon/sub18.htm
http://homepage3.nifty.com/gicchon/sub19.htm
http://homepage3.nifty.com/gicchon/sub20.htm

また、最近やったアラビア語入力の配列作成でも、この指標を抽象化したものを使っています。

http://homepage3.nifty.com/gicchon/arabic-input-2.doc

すでに述べた通り、医学などの知見がない状況ではこの程度の想定しかできないのですが、それでも議論の取っかかりにはなると思います。

コストの構造が分かれば配列の構造もある程度想像ができます。例えば、私がやったアラビア語の子音の配列では、各キー毎にコストが設定されていて(連続した文字の打鍵の難易などは考慮していない)、それはほぽ左右対称になっています。そうなれば、そのコストを最小化するような配列では総コストの左右の分割はほぼ対称になるはずです。

いずれにしても141Fさんのおっしゃるように打鍵数だけで負担を測るのはおそらく不十分だというのは私も同感です。
Posted by 杉田伸樹(ぎっちょん) at 2009年03月14日 21:52
どうにも考えがまとまらないので、箇条書きにしてみます。

・「指の移動距離」という指標は、無シフト率が高い Tron 、さら、小梅の順番でおそらく不利に働く。
・10万字サンプルでは採用していない、定量化できていない指標の一つ。
・器用さ・素早さでは人差指が、強さでは中指が一番だと主張しておく。
・配列の特性を語る場合は、指や手首、手などの物理的な負担と同列に、脳の負担も定量化して語るべき。
・IME の変換コストや同音異義語の選択コストも脳の負担として加味すると、漢直や多段シフト系も親指シフトと数値で比較できるようになるかも。
・論理配列の性能を多面的に定量化していくという作業は、作る側だけじゃなく、使う側、選ぶ側にもメリットが大きいはず。

自分好みの論理配列を選ぶという行為を、実生活の何に例えたらしっくり来るのか。なかなかうまくハマらなくてイライラしています。
Posted by 141F at 2009年03月16日 00:55
141Fさん

順不同、かつ少し長くなるので3つの見出しに分けます。

1.メタファー

私の考えているメタファーは、料理人が包丁を選ぶ、というものです。良い料理を作るための道具を選ぶということです。

料理人のアウトプットは当然料理です。お客は料理人の道具には興味がありません。これと同じで、文章を見てそれがどんな入力方法で書かれたかは分かりませんし、文章を読む人はそれに興味がありません。しかし、料理人同士での会話では道具の話題は重要です。包丁の目利きができない料理人は仲間うちでは相手にされません。それと同じことだと考えます。

道具の評価(私の考えた指標もそうしたものの一つです)は、道具がきちんとできているかを測る定規であると同時に、包丁に対する砥石の役割を果たしていると考えます。評価と性能は一方通行ではなく、性能を調べるには評価が必要だし、評価は性能向上のためには欠かせないものです。

ですから評価方法が良いものであることは重要です。特にプロの仲間うち(道具を作る人と使う人という意味でも)ではそれが道具を話題にする際の共通言語になるからです。

2.私の指標の守備範囲

私の指標の守備範囲は当然限られていて、何でも評価できるわけではありません。大体の目安としては、配列屋の仕事範囲と重なるということかと思います。脳の負担(定義がいま一つはっきりしませんが)に関しては考慮がされていません。

なお、IMEの変換コストや同音異義語の選択コストに関しては、漢直方面では詳しい人がいると思います。ただ、私は、それらに関しては数量化のような詳細な方法論は見たことがありません。

私の記憶に間違いがなければ、M式を提唱している森田さんは、M式での入力で、かなと漢字の区別をするようにしていたと思います。これは選択コストに対する配慮かなと思います。選択コストに関する議論はM式のサイトのどこかにあったような気がします。

私の指標については、パラメーターの設定などで実証的な裏付けがされていないという弱点もあります。人指し指vs中指の議論のように本当のところはどうなのか分かっていません。

とはいえ、私の指標はまったく荒唐無稽かというとそんなことはないと思っています。細かなパラメーターの選定の根拠を問われると弱いのですが、それでもコスト構造の常識的な直感と明らかに反するところは少ないと思います。また、指標の構造が簡単であるために、パラメーターを変化させた場合の結果の違いの比較(感応度分析)が簡単にできて、私のこれまでの経験ではさまざまな結果の多くはパラメーターの変化に対してかなり頑健です。

指標の構造が簡単なことは、第三者による検証や改造が容易であることも意味します。これは重要なポイントだと考えています。

3.指標に関する個別の論点

「『指の移動距離』という指標は、無シフト率が高い Tron 、さら、小梅の順番でおそらく不利に働く。」というのはいま一つ論旨がはっきりしません。シフトを避けるために指の移動距離が大きいところに文字を移動させているという意味でしょうか。

シフトをコストのどう反映させるかについて、決定版といえるような根拠はありません。ただ、シフトが無コストであるとも完全には言えないでしょう。シフトを考慮した計算も私のサイトに出ていますし、特に、アラビア語配列の論文ではそれが標準の指標となっています。

なお、指の移動距離だけを指標とすることは、打鍵数だけを指標とすることと同様に不十分と言えます。私の考えはこの両者を取り入れたものがおそらく真実に近いのだろうというものです。

10万字サンプルで計算していただけると感謝します。私がやったのは200字にも満たないものでした。これを見て、数千字でやってくれた人もいました。私の見るところ、文字数が多くなっても、大きな傾向(例えばNICOLAがJISかなやローマ字に比べて優位であることなど)は変わりがないという結果だったと私は思っています。

とりあえず、今日のところはこの辺で。
Posted by 杉田伸樹(ぎっちょん) at 2009年03月17日 00:26
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打鍵数=負担度ではないと主張してみる。(2)
Excerpt: 具体的な数字を代入して負担係数がどんな感じなのか探ってみましたが、そう簡単には問屋が卸してくれません。
Weblog: Weblog 61℃
Tracked: 2009-02-26 01:41

素材はいろいろあるけど、まとまらない。
Excerpt: なにやら料理に失敗したみたいなタイトルですが(苦笑)。ぎっちょんさんのコメントに対する回答だったり、そうとも限らなかったり。
Weblog: Weblog 61℃
Tracked: 2009-03-17 02:21